加水分解反応式
ケミカルルサイクル概念図
加水分解での回収率


【緒言】廃プラスチックをリサイクルする手法としては、大きく分けて、①「ケミカルリサイクル」(化学的に分解して化学製品の原料として再利用)、②「マテリアルリサイクル」(プラスチック製品の原料として再利用)、③「サーマルリサイクル」 (固形燃料にしたり焼却して熱エネルギーとして再利用)の3つがあると言われています。この内、ケミカルリサイクルは、原料・モノマー化、ガス化、油化されます。
 超臨界水は、このケミカルリサイクルを可能にする流体で、特異性と特性で示すように、利用温度を変える事により、比較的低温域(亜臨界)での加水分解による原料・モノマー化と、 高温域(超臨界)でのラジカル反応域を利用するガス化などが可能です。

【モノマー化】水は、特異性と特性で示すように、250℃近辺で、イオン積(解離定数)が最大値を示し、常温との比較で、[H⁺]・[OH⁻]が1,000倍増加し、誘電率は、常温で極性を示す80が、 30以下となり、メタノールよりも極性が小さくなり、水と油が溶け合い、加水分解反応が非常に起こりやすい状態を作ることができます。このため、複数の有機化合物が、互いの分子内から水 H₂O を取り外しながら結合(縮合)し、それらが連鎖的に繋がった高分子化合物は、 亜臨界水中で、逆反応の加水分解が起こり、元のモノマーに戻すことが可能になります。
   縮合反応(高分子化反応) : A-OH + B-OH → A-O-B + H₂O
   加水分解反応      : A-O-B + H₂O → A-OH + B-OH

ケミカルリサイクルプロセスの具体例として、右最上段図に示すポリウレタン原料であるTDI(トリレンジイソシアネート)製造工程から発生する残渣(縮重合物であるアミド結合保有重合残渣)から亜臨界水で加水分解させてモノマーであるTDA(トルエンジアミン)を回収し、 再びTDIの原料として再利用するケミカルリサイクルプラントが1998年に千葉県鹿島で、世界で初めて稼働しました。重合残差は、従来、焼却処理し二酸化炭素を発生させていましたが、本技術により焼却せず二酸化炭素を排出しないだけではなく、 重合残渣をアルカリ触媒等の添加剤を一切使用せず、水だけを使用してケミカルリサイクルを実現する非常に環境に優しい技術です。この技術は、右図の右縦軸のイオン積(解離定数)で示すように、亜臨界水のイオン積が大幅に増加(右図では逆数で最小)し、 加水分解反応に好都合な反応場が提供された事により実現しました。右図に示すように、TDAの回収率は、 イオン積と相関関係がある結果となりました。10MPa、250℃、加水比 1.8wt=9mol、滞留時間10~20分の反応条件で、年間7,200 ton TDI 残渣のケミカルリサイクル処理が実現しました。

縮重合化合物の同様な加水分解によるケミカルリサイクルの例として、以下が確認されています。
〇 2001年に韓国Namhae Chemical社で尿素からメラニン合成する際の残渣水中のアミド結合物(尿素、Ammeline、Ammelide、Biuret)をアンモニアに加水分解し、尿素製造プロセスにリサイクルする3.4ton/日プラントが稼働しました。

ナイロン6ケミカルリサイクル反応式ナイロン6製造工程から発生する蒸留残渣を18MPa、330℃、滞留時間20分、加水比2wtで加水分解すると、εカプロラクタムが80%以上の収率で回収される事が確認されています。

ポリウレタンケミカルリサイクル反応式ポリウレタン廃棄物のケミカルリサイクル例として、軟質ポリウレタン(スラブ)は、250℃付近で完全に分解し、ジアミンとポリオールの回収率は、270~320℃で、ほぼ100%、320℃以上では、回収率が低下する事が確認されました。10MPa、290℃、加水比 2wt、滞留時間30分の 加水分解条件で、得られた回収ポリオール40wt%とバージンポリオール60wt%でポリウレタン発泡が問題無く確認されています。(参考特許:特開平10-310,663)

PETケミカルリサイクル反応式ポリエチレンテレフタレート(PET)を加水分解すると、テレフタル酸(TPA)とエチレングルコール(EG)が得られるが、加水分解反応時間が30分の場合、TPAは、30MPa、300℃で約90%、350~400℃で、100%の回収率が得られる。 一方、EGは、二次反応により副生成物が生成するため、40~20%と低く、反応時間と反応温度の最適化が必要となっている。

上記も含めた以下の縮重合化合物が亜臨界水での加水分解で、モノマー等にケミカルリサイクルできることが示唆されています。

化学結合ケミカルリサイクル適用可能な物質例
アミド結合
[ -NH-C- ]
   ||
   O
樹脂ナイロン6、ナイロン66、尿素樹脂 他
化学品TDI、MDI、カプロラクタム、メラニン合成残渣(尿素、Biuret、Ammeline、Ammelide) 他
その他絹 他
エステル結合
 [COO-]
樹脂 PCケモカルリサイクルポリウレタンポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、アルキド樹脂 他
化学品ジメチルテレフタレート、フレフタル酸、フタル酸ジブチル 他
エーテル結合

 [ -O- ]
樹脂ポリアセタール、変性ポリフェニレン、ケイ素樹脂 他
化学品エピクロヒドリン、ペンタエリスリトール、酸化プロピレン、ビスフェノールA 他
その他セルロース、キチン、キトサン 他

【単糖・オリゴ糖化】植物細胞の細胞壁や植物繊維、木材は、セルロースやヘミセルロース(植物細胞壁に含まれるセルロースを除く水に対して不要性の多糖類の総称)といった多糖を主成分としてできていますが、この多糖を単糖・オリゴ糖(単糖オリゴマー)に分解できれば、 石油や石炭に代わるエネルギー源として期待されるバイオエタノールの原料として利用することができます。亜臨界水で加水分解する例として、以下が確認されています。

スギ木粉

〇 スギ木粉(辺心材60~80メッシュ、セルロース50%、ヘミセルロース20%、リグニン30%)を17~23MPa、280~313℃でセミバッチ式(木粉充填済み中に亜臨界水を連絡供給)で加水分解すると、出口温度が280℃に達した水供給開始後10分時点で濃厚色の分解物が生成し、 40分(実質反応時間約30分)で、ほぼ濃厚色の分解物は無くなり、ほぼ無色の分解物、或は、反応水得られます。単糖グルコースも含めたオリゴ糖の収率は約46%、リグニン由来の残渣(固体)17%が残りました。別試験で、反応容器内温度が160~200℃の中温域で、 ヘミセルロースがほぼ100%分解する事が分かっています。一方、別の小型試験装置でのオリゴ糖の最大回収率が、54%が得られたこともありました。一方、グルコース等の単糖類の再分解の結果、微生物活動を抑制するフルフラール類が75mg/g検出されたため、 更なる最適化が必要な状況です。

〇 京都大学エネルギー科学研究科の「超臨界水によるリグノセルロースからのバイオエタノール生産」(Accessed @ 202005010)によると、超臨界水状態の380℃、40MPaで、誘電率が13.0、イオン積が12で、ラジカル反応が起こる領域で、短時間処理した時の分解生成物は、以下と報告されています。

処理時間オリゴ糖グルコース多糖(沈殿物)フルクトースレボグルコサン5ヒドロキシメチルフルフラールグルコールアルデヒドグルコール酸乳酸
0.12 秒42 %3 %31%---2 %1 %1 %
0.24 秒38 %10 %11%4 %2 %2%8 %3 %3 %
0.48 秒7 %10 %-11 %3%7 %16 %4 %5 %

【ガス化】超臨界水によるガス化の例として、ナフサの主成分であるヘキサンを原料として、超臨界水分解を行うと、以下の結果が確認されています。
   ・圧力が高いほど、水素が減少し、平衡計算の傾向通り、メタンが増加。
   ・水/ヘキサンmol比が、0.66 ~ 2で、問題なくガス化が確認され、水/ヘキサン比が小さいほど、水素が減少し、
    平衡計算の傾向通り、メタンが増加。
   〇 25MPa、345℃、加水比0.67molでメタン CH₄回収率は、> 78mol%。
    生成ガス組成は、CH₄ 77.96%、CO₂ 21.74%、H₂ 0.28%、C₂H₆ 0.03%。