本ページ内の図等の構成
モリエル線図の説明・使い方
 ・脱フロンCO₂液化プロセスの例
○エンタルピー vs 圧力(0.1MPa~)
○ドライアイス領域含む
 エンタルピー vs 圧力(0.1MPa~)

○エンタルピー vs 圧力(0.1MPa~)
○エンタルピー vs 圧力(1MPa~)
○圧力(1~20MPa) vs エンタルピー
○圧力 vs 蒸発潜熱

1kgのCO₂が持っているエンタルピー
を比エンタルピー(kJ/kg)と言います
が、ここでは「比」を省略しています。

モリエル線図(p-h線図、圧力-比エンタルピー線図)は、縦軸に圧力、横軸にエンタルピー(CO₂の熱量)を取ったもので、超臨界CO₂サイクルでのCO₂の状態を表せます。操作条件の各種状態でのCO₂の状態を1枚の線図で描く事により、 各部の状態や数値を知り、また、その数値を使用して熱量計算や運転状態の判断に活用する事ができます。特に、プロセス・装置設計する場合には、二酸化炭素のエンタルピーの特長を理解して行うことが非常に重要です。
・臨界点近傍では、圧力、温度の僅かな変化でエンタルピー、熱容量が大きく変化
・二酸化炭素の蒸発潜熱は圧力が高い程小さくなり、液化温度は高くなり、液化しやすくなる。
 一方、二酸化炭素中の不純物との分離は、圧力が低いほど、効率的になる。
 二酸化炭素を回収、分離、液化して再利用する場合には、冷凍機の効率も含めて最適化する。
   ⇒ 工業化:CO₂回収で詳細説明します。
 超臨界CO₂のプロセス運転条件とモリエル線図の見方は、こちらで、詳細説明します。


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・超臨界二酸化炭素の研究・開発を検討・推進している方(「想定外」でないプロセス構築 他)

 モリエル線図で使用するエンタルピーは、熱力学的な物理量の一つで、定圧下でのエンタルピーの変化量は、その物質CO₂に出入りするエネルギーに等しく、加熱・冷却する熱交換器での交換熱量と等しくなります。 例えば、図1より、20MPa、20℃、537kJ/kg (図3.1)のCO₂を20MPa、100℃に加熱するとエンタルピーは、729kJ/kg (図3.2)となり、CO₂加熱に必要な交換熱量は、192kJ/kgとなります。
 図1に示すエンタルピーは、日本機械学会編:流体の熱物性値集(1983年8月発行)によります。これでの臨界点 7.3825MPaA、304.21K(31.06℃)のエンタルピーは、636.6 kJ/kgです。エンタルピーの基準点が異なると数値が異なりますが、差で利用しますので特に問題はありません。

モリエル線図
図1. CO₂モリエル線図
空白
蒸気圧
図2. CO₂ 温度-圧力線図(状態図)
【モリエル線図の説明】

 図1で、凸型赤線は飽和線で、図1臨界点 (7.3MPa, 637kJ/kgの☒)右側赤線は凝縮線(ガスが液化する)、臨界点左側赤線は沸騰線(液がガス化する)、 0.52MPaの水平線は、昇華線(固体がガス化する)です。

 図2.状態図の青線沸騰線は、図1赤線の凝縮線と沸騰線に相当し、図2青線沸騰線は、横軸が温度のため、線は1本ですが、図1では、沸騰(左から右側へ、液からガスへ)・凝縮(右から左側へ、ガスから液へ)共にエンタルピーが変化するため、 左右の赤線に幅があり、それが潜熱であり、凸型線となります。
 例えば、LGCボンベの充填圧力である2.1MPaAの沸点・凝縮温度は-18℃で、液エンタルピーは461kJ/kg (図3.3)。加熱するとガスが発生しだし、 エンタルピーが増加し、定圧線に沿って右側に移行し、エンタルピーが739kJ/kg (図3.4) に達すると、液は全てガスになります。この時の蒸発熱=潜熱は、739-461= 278kJ/kgと計算できます。

モリエル線図使い方
図3. モリエル線図使い方例

【モリエル線図の使い方の例】

1.熱量Heat Duty・熱サイクル : 横軸がエンタルピーで、上述のように熱交換器等の熱量Heat Duty、エアコンのフロンサイクルと同様にCO₂熱サイクル等 を視覚的に掴むことができます。CO₂を循環・回収する場合は、加熱量と冷却量は同一の熱サイクルとなり、目的処理温度は熱量的には意味がなくなります。詳細は、超臨界CO₂処理の例を参照下さい。
2. 圧縮・膨張、等エントロピー変化 : ポンプ・圧縮機で流体を圧縮する場合、タービン等で減圧・膨張する場合はエントロピー△Sは増加します。例えば、0.57MPaA、20℃、800kJ/kg (図3.5) から圧縮比5.3で3MPaAまで圧縮すると等エントロピー圧縮では148℃、907kJ/ kg (図3.6o) ですが、実際の圧縮では非可逆でエントロピーが増加し、断熱効率56%の時は、228℃、990kJ/kg (図3.6) になります。

3. 減圧弁での断熱膨張と気液比 : 超臨界状態で抽出等した後、後行程で減圧して分離等を行いますが、通常は、熱の出入れが無い断熱膨張、エンタルピーが変化させずに減圧しますが、その場合は、 モルエル線図では、真下に変化します。例えば、16MPaG、40℃で処理した後に断熱膨張/減圧する場合は、16MPaG、586kJ/kg (図3.7)から真下に圧力が低下し、赤線の沸騰線を横切ると液とガスが共存する二相流域に入ります。 更に圧力が下がり、0.52MPaGになるとドライアイスが発生します。沸騰線以下で発生する液とガスの割合は、梃子原理()で計算します。例えば、2MPaG時に発生するガス量は、図3の梃子原理:a/(a+b)、液量は、梃子原理:b/(a+b)で、以下のようになります。
  ガス量 = (586 - 461)/(739-461) = 125 / 278 = 45 %。数値は下記のエンタルピー値、
586:16MPaG-40℃ (図3.7)、 461:2MPaG飽和液 (図3.3)、739:2MPaG飽和ガス (図3.4)。
  液 量 = (739 - 586)/(739-461) = 153 / 278 = 55 %。
14MPaG、80℃で処理した後に断熱膨張/減圧する場合は、14MPaG、726kJ/kg (図3.8)から、真下に変化し、2MPaG時で発生するガス・液量は以下となります。
  ガス量 = (726 - 461)/(739-461) = 265 / 278 = 95 %、液量 = (739 - 726)/(739-461) = 13 / 278 = 5 %

モリエル線図使い方
図4. 脱フロン(フロン未使用)CO₂液化プロセスの例

【モリエル線図の使い方の例 その2:
  脱フロン(フロン未使用)CO₂液化プロセス】

フロン使用する冷凍機/クーラを使用せずに大気から回収したCO₂を圧縮し、超臨界流体の等温線/低圧ほどエンタルピー小さい特徴を利用してCO₂液化するプロセスの検討例を示します。
多段往復動圧縮機で回収した100kg-CO₂を大気圧1から例えば3段で15MPa迄冷却水で冷却しながら圧縮した後2(図4では200℃)、冷却水で50℃に冷却し3、凝縮器で4状態から断熱膨張されたCO₂で40℃冷却する。 15MPa、40℃のCO₂をコールドエバポレータCE充填圧の2MPa迄断熱膨張する8と54.7kg-液CO₂と45.3kg-ガスCO₂となり、液CO₂はCEに充填し、ガスCO₂は温度が-17.9℃と低いため、凝縮器で冷却水で50℃迄冷却された圧縮ガスを冷却し(フロン冷凍機の代替)40℃迄加温され、 大気圧に断熱膨張され20℃に降温し圧縮機の吸込みに戻ります。全体的な収支は以下となります:
 ・流量:原料CO₂ガス 54.7kg + リサイクルCO₂ガス 45.3kg6 = 圧縮機吸込CO₂ガス 100kg1
 ・熱量:(50℃3 - 39.7℃4)kJ/kgx100kg = (40℃6 + 17.9℃5)kJ/kgx45.3kg

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エンタルピー図
図5. ドライアイス領域含むエンタルピー vs 圧力(0.1MPa~)
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エンタルピー図
図6. エンタルピー vs 圧力(0.1MPa~)
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エンタルピー図
図7. エンタルピー vs 圧力(1MPa~)
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エンタルピー図
図8. 圧力(1~20MPa) vs エンタルピー
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エンタルピー図
図9. 圧力 vs 蒸発潜熱