一とせに一度つまるる菜づなかな
むめがかにのつと日の出る山路かな
はれ物にさはる柳のしなへ哉
梅が香に昔の一字あはれ也
からかさに押しわけみたる柳かな
八九間空で雨ふる柳哉
春雨や蓬をのばす艸の道
四つごきのそろはぬ花見心哉
花見にとさす船遅し柳原
青柳の泥にしだるる塩干かな
春雨や蜂の巣つたふ屋ねの漏
顔に似ぬ発句も出よ初ざくら
雪間より薄紫の芽独活哉
梅がかや見ぬ世の人に御意を得る
春の夜は桜に明てしまひけり
蝙蝠も出よ浮世の華に鳥
春雨や蓑吹かえす川柳
雀子と声鳴かはす鼠の巣
古川にこびて目を張柳かな
子に飽くと申す人には花もなし
鶯や柳のうしろ藪のまへ
むめが香に追もどさるる寒さかな
前髪もまだ若艸の匂ひかな