和歌と俳句

與謝蕪村

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妹が垣根さみせん草の花咲ぬ

春雨やゆるい下駄借す奈良の宿

よもすがら音なき雨や種俵

古河の流を引つ種おろし

玉川に高野のや流れ去

花に来て花にいねぶるいとま哉

居風呂に後夜きく花のもどりかな

鶯のたまたま啼や花の山

身に更にちりかゝる花や下り坂

華見戻り丹波の鬼のすだく夜に

花盛六波羅禿見ぬ日なき

花に舞はで帰さにくし白拍子

傾城は後の世かけて花見かな

花の御能過て夜を泣く浪花人

かくれ住てに真田が謡かな

花ちるやおもたき笈のうしろより

ゆく水にちればぞ贈る花の雲

ちるさくら落るは花のゆふべ哉

花に来て鱠をつくるおうなかな

かり寐するいとまを花のあるじかな

飛かはすやたけごゝろや親雀

哥屑の松に吹れて山ざくら

折もてるわらび凋れて暮遅し

月に遠くおぼゆるの色香哉