和歌と俳句

與謝蕪村

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燈を置かで人あるさまや梅が宿

梅ちりてさびしく成しやなぎ

や柏峠をはなれかね

今朝きつると見しに啼かで去

はるさめや暮なんとしてけふも有

池と川とひとつになりぬ春の雨

春雨の中を流るゝ大河かな

春雨やものがたりゆく簑と傘

春雨や鶴の七日をふりくらす

春雨に下駄買泊瀬の法師かな

柴漬の沈みもやらで春の雨

春雨の中のおぼろの清水哉

粟島へはだし参りや春の雨

遅き日や雉子の下りゐる橋の上

柴刈りに砦を出るや雉の声

亀山へ通ふ大工やきじの声

河内女の宿に居ぬ日やきじの声

若草に根をわすれたるかな

苗代の色紙に遊ぶかはづかな

旅人の鼻まだ寒し初ざくら

みよし野のちか道寒し山さくら

みよし野に花盗人はなかりけり

花に遠く桜に近しよしの川

雲を呑でを吐なるよしの山

花ちりて身の下やみやひの木笠