七くさや袴の紐の片むすび
鶯に終日遠し畑の人
うぐひすや案内揃ふて飯時分
剛力は徒に見過ぬ山ざくら
梅咲ぬれどむめやらうめじややら
菜の華や法師が宿を訪はで過し
みの虫の古巣に添ふて梅二輪
なつかしき津守の里や田螺あへ
静けさに堪えて水澄たにしかな
鴈立て驚破田にしの戸を閉る
鍬濯ぐ水や田螺の戸々に倚
夜桃林を出てあかつきの嵯峨の桜人
花を踏し草履も見えて朝寝かな
暮んとす春を小塩の山ざくら
銭買て入るやよしのゝ山ざくら
山守のひやめし寒きさくらかな
人間に鶯啼や山ざくら
折釘に烏帽子かけたり春の宿
甲斐がねに雲こそかゝれ梨の花
まだ長ふなる日に春の限りかな
春雨やもの書ぬ身のあはれなる
鴈行て門田も遠くおもはるゝ
帰る鴈田ごとの月の曇る夜に
畠うつや鳥さへ啼かぬ山かげに
耕や五石の粟のあるじがほ