俊成
埋木となりはてぬれど山櫻惜しむ心はくちずもあるかな
俊成
山櫻さくより空にあくがるる人の心やみねのしらくも
俊成
道遠くなにたづぬらむ山櫻おもへば法の花ならなくに
俊成
花にあかでつゐに消えなば山ざくらあたりを去らぬ霞とならぬ
俊成
たづねくる人は宮こを忘るれどねにかへりゆく山ざくらかな
西行
待つにより散らぬ心を山ざくら咲きなば花の思い知らなん
西行
あくがるる心はさても山櫻ちりなむ後や身にかへるべき
西行
山ざくら霞の衣あつくきてこの春だにも風つつまなむ
西行
年を経て待つも惜しむも山ざくら心を春はつくすなりけり
西行
山櫻かざしの花に折そへてかぎりの春のいへづとにせむ
西行
おなじくは月の折咲け山ざくら花見る夜はの絶え間あらせじ
西行
待たでただ尋ねを入らむ山桜さてこそ花に思ひ知られめ
西行
山ざくら咲けばこそ散るものは思へ花なき世にてなどかなりけん
西行
盛りなるこの山桜思ひおきていづち心の又浮かるらん
西行
山桜散らぬまでこそ惜しみつれふもとへ流せ谷川の水
西行
山桜吉野まうでの花しねを尋ねむ人の糧に包まむ
西行
散ば又なげきやそはむ山桜さかりになるはうれしけれども
俊成
山桜ちりに光をやはらげてこの世に咲ける花にやあるらむ
有家
朝日かげにほへる山のさくら花つれなく消えぬ雪かとぞ見る
定家
よのつねの 雲とは見えず やまざくら けさやむかしの ゆめの面かげ
実朝
春くればいとかのやまの山ざくら風にみだれて花ぞちりける
実朝
咲きにけりながらの山のさくらばな風にしられて春もすぎなむ
定家
やまざくら 花のせきもる あふさかは ゆくもかへるも わかれかねつつ
定家
山櫻 花のしたひも ときしあれば さながらにほふ 春のころもで