和歌と俳句

山桜

山櫻かざせし馬車をまた抜きし 汀女

筆筒や筆と挿し置く山ざくら 秋櫻子

椅子の竹通して駕や山櫻 虚子

曲江のにごらぬ雨や山ざくら 蛇笏

山桜とほす日ざしに笠脱がで 草田男

山桜あさくせはしく女の鍬 草田男

松の木に烏がとまり山櫻 立子

山ざくら碓氷くだりて日の炎ゆる 源義

山櫻雪嶺天に声もなし 秋櫻子

駕舁の飛ぶが如くに山桜 虚子

山ざくら父子の名前に蛇と龍と 草田男

山櫻虚空に虻をよく放つ 立子

一つ温泉に四方の白雲山ざくら 蛇笏

山又山山櫻又山櫻 青畝

道しるべ前うしろ指し山桜 三鬼

女の一語男等よろこぶ山桜 草田男

甲斐駒の雲間の雪や山ざくら 秋櫻子

瀧に濡れ咲かむとすなり山ざくら 秋櫻子

巌壁も見わかぬ雪や山ざくら 秋櫻子

磧湯の瑠璃の湯壺や山ざくら 秋櫻子

秋の日に似て山桜咲きにけり 夜半

山ざくら水平の枝のさきに村 林火

立てかけて女鍬あり山櫻 林火

ひと本の遠山桜日があたり 悌二郎

鋤きいそぐこれで総出か山ざくら 静塔

暈を被て日はそそぐなり山櫻 林火

花神赫と日を配りけり山櫻 林火

山櫻佛の御衣ゆるやかに 林火