水打つや森のひぐらし庭に来る
水滴に青馬追の来てとまる
畦の月狐のかみそり暮れゆけば
川禰宜の巣や秋風の淵の上
百舌鳥の鳴く森を神輿のいでゆけり
三つの獅子戯れ舞ふや秋時雨
重陽や青柚の香ある雑煮椀
重陽や老いのはらから餅を食ふ
きのふ刈りけふ雑魚のゐる田となりぬ
君とわれ短日読めぬ墨の銘
青丹よし寧楽の墨する福寿草
寒餅を搗く音きこえすぐやみぬ
寒木瓜とわれとの日向方二尺
大雨降り大雨すぎて木瓜ひらく
筆筒や筆と挿し置く山ざくら
春月や寝鳥のたちし雑木原
雲脱がぬ岳のいくつや雹のあと
山百合やこのふるみちを人わすれ
瀧落ちて山女魚のあそぶ淵の見ゆ
やぶさめや峠を左右に越ゆる霧
鰯雲葛西の空に鵜がかへる
きのふ過ぎけふも紫苑にうするる日
宵の雨夜半の月夜や草ひばり
つたへ古る獅子舞唄や秋祭