四季載せて今冬載せて海はあり
海辺の墓地冬砂深しかりそめに
白沙の青松冴え冴え残るよ艫の別れ
冬の白壁雀尾出せばその尾の影
雨の日は昼の灯多し蜜柑村
茶の花や嘴黄なる白家鴨
黒き小牛に新藁負はせうつりよし
女学校冬晒落書「I like him」
冬雨の祷りて叶ひし岩洗ふ
潮に泛く蜜柑や雨の白き船
花崗岩冬波洗ひ雨そそぎ
二つの唐傘冬の松から青き雨
菫束ぬ寄りあひ易き花にして
肩ごしに見下ろす乳房岩の春
花蘆辺朝日のごとき母と居て
遠雲雀春の大地は縦長し
もぬけ倉小花いつぱい痩せ桜
倉壁高しかげろふ届かずあららかに
倉の内外土鼠むさべつ春の土
山桜とほす日ざしに笠脱がで
山桜あさくせはしく女の鍬
月と日と落葉松の芽に咽びあふ
蒲公英や一切事に斯く雲寄るな
永き日の餓ゑさへも生いくさすな
裸でうたふ子の列大人はいくさすな