無学の責め前より寒気うしろより
停車場の鳥瞰に小さき小さき林檎
ラグビーと乳牛斑の身風にそろへ
行くほどに枯野の坂の身高まる
衆目を蹴つて脱兎や枯野弾む
天餌足りて胸づくろひの寒雀
冬の蠅ちりあそぶごと吾子の詩句
隣人の戸の音越しに降誕祭
蔓のからみし迹ふかき杖降誕祭
降誕祭睫毛は母の胸こする
旅の吾子実だけを摘んで藪柑子
噛む林檎紅白一体亡き友よ
寒星や神の算盤ただひそか
梅一輪踏まれて大地の紋章たり
林檎のそば涙に洗はれきつた顔
蠅生れて平らなるものを好み這ふ
学と詩と背骨二本の凍み易く
翡翠の一毛だにも吹き立たず
旅人は闊歩するなし豆の花
日蝕や花期やや近き沙羅双樹
白百合や銀の秤が吾子の手に
花茨白花は楽の通ひ易く
花紫雲英児がふたり来て声ふたいろ
昼の指一節にとまり草かげろふ
下照る夏灯車中童話を読む声あり