いぬふぐり空を仰げば雲も無し
落椿土に達するとき赤し
庭に下り話しつづける蝶は飛ぶ
春寒きわが誕生日合ッ点じや
春寒のいつまでつづく憤り
雪解風といふ風吹きし小諸はも
永き日のわれ等が為の観世音
松蔭に咲き拡がりし大桜
青き色地に点じたる蕗の薹
摘まである妹が垣根の蕗の薹
竹藪の奥もの深く春の雨
祖母立子声麗らかに子守唄
鉢木瓜に水やることも日課かな
年老いし椿大樹の花の数
花の数倍にも見えて風椿
春泥を人罵りてゆく門辺
ほむらとも我心とも牡丹の芽
木の芽伸ぶきのふ驚き今日驚き
日の当る水底にして蘆の角
足もとに春の寒さの残りをり
犬の舌赤く伸びたり水温む
谷の寺元黒谷の霞みけり
駕舁の飛ぶが如くに山桜
類ひなき外出日和や花曇
山隈に咲き出でたりし花の雲