文旦の皮もこもこと春寒き 草城
燭とつて春寒き影曳かんとす 楸邨
さびしさと春の寒さとあるばかり 占魚
出不精の又出ず仕舞春寒し 虚子
春さむや燈下に一つ硯筥 蛇笏
野の起伏ただ春寒き四十代 楸邨
しつこくも春寒き日の続きけり 虚子
春寒や月満つことも曇りかさね 林火
猫が嗅ぐ寝かへる鼻の春寒を 楸邨
春寒の藪の震へや友への債 静塔
春寒きわが誕生日合ッ点じや 虚子
春寒のいつまでつづく憤り 虚子
春寒き湖より湧ける夜霧かな 上村占魚
登呂春寒生きたる声の小学生 楸邨
燭春寒炎の中に炎立つ 楸邨
使はるゝ身より使ふ身春寒き 真砂女
春寒し泣けば現はる幼な顔 林火
老夫婦のみのあけくれ春寒き 草城
春寒の初夜過ぎて「田園」を聴く 草城
春寒や渚に晒るる大魚の歯 風生
春寒しおもひもよらぬことにあひ 万太郎
春寒やうしろすがたのそぞろ神 楸邨
レモン春寒箇々の拒絶の充実す 楸邨
春寒や護摩の火の今飴色に 立子