和歌と俳句

青森

牧水
いつか見む いつか来むとて こがれ来し その青森は 雪に埋れ居つ

牧水
雪高く 往き交ふ人の 輝きて いま青森に 夕日さすなり

千樫
青森の みなとの宿の 宵ふけて 庭木にさわぐ 鳥のこゑかも

黝汐にのりて春趁ふ鴎かな 蛇笏

高潮をむかへて漁港春さむし 蛇笏

青森の残暑きびしき旅終る 立子

舌重き若者林檎いまだ小粒 三鬼

鉄球の硬さ青空の青林檎 三鬼

横長き夕焼大宰の山黒し 三鬼

なお北へ船の半身夕焼けて 三鬼

寡黙の国童子童女に草いちご 三鬼

港湾や青森ののけぞり鳴く 三鬼