和歌と俳句

瑞巌寺

子規
経の声はるかにすずしすぎ木立

子規
政宗の眼もあらん土用干

茂吉
ちちははが 幾たび話し たまひける ほとけの寺に われは来にけり

茂吉
きさらぎは いまだも寒し 雪のまに はつかに見ゆる 砂は氷りぬ

茂吉
瑞巌寺 まうでてくれば 氷りつつ 春のはだれは 残りけるかも

茂吉
降りつみし 雪より見ゆる 牡丹にぞ 大きくれなゐの 花はひらかむ

茂吉
きさらぎの はだれのうへに 見つつゆく 杉の青き葉 おちてゐたるを

茂吉
雪に立てる 南蛮鉄の 燈籠を わきて尊ぶ いとまなかりき

茂吉
政宗の 二十七歳の 像を見つ よろひたる身に われは親しむ

茂吉
まぢかくの 雪の中より 水わきて 流るる音す 立ちてし来れば

茂吉
瑞巌寺の うらの園生に 雪しろし 幾たびも積みし 雪とおもほゆ

茂吉
政宗の 追腹きりし 侍に 少年らしき ものは居らじか

茂吉
海を吹く 風をいたみと さかさまに 杉の葉ちりぬ 春の斑雪に

茂吉
みちのくの 瑞巌禅寺の ほとりにて 杉葉もやしし 跡ぞ残れる

茂吉
しづかなる み寺といへど 封建の 代の悲しみの 過去を伝へし

茂吉
瑞巌寺の 鷹の間みれば ひとときに 翼を張れる 鷹が目に見ゆ

茂吉
瑞巌寺の 砂を踏みつつ 居りしとき 三門よりただちに 海の波みゆ

茂吉
政宗の 二十七歳の 像見たり 名護屋の陣に ありしころとぞ

秋櫻子
菊の香や芭蕉をまつる燭ひとつ

三鬼
一僧を見ず夏霧に女濡れ