和歌と俳句

風鈴 ふうりん

風鈴は行人にまた隣人に 汀女

風鈴があればかなしき時あらん 綾子

焼跡の葎の一つ風鈴鳴る 楸邨

せはしげに安風鈴の鳴り通し 風生

業苦呼起す未明の風鈴は 波郷

風鈴やとかく話の横にそれ 真砂女

風鈴の風かまくらのとほきかな 万太郎

野の軒の風鈴の音や世の広さ 草田男

風鈴の舌ひらひらとまつりかな 万太郎

風鈴の肋を打つて鳴りいでぬ 波郷

風鈴やさして来りしあかるき日 万太郎

風鈴を吊る海よりの広き風 誓子

風鈴の音に月明かき夜を重ね 汀女

風鈴の鳴りつぐうしろ一風樹 爽雨

渋民の歌の風鈴チンと先づ 青畝

陶の町風鈴耳から耳へ鳴る 静塔

大箸風鈴四本の翳に鳴りだせり 林火

風鈴の紙片は杜甫の詩なるべし 青畝