和歌と俳句

藤原良経

南海漁父百首

月やどす露のよすがに秋暮れて頼みし庭は枯野なりけり

猪名の山みちのささはら埋もれて落葉がうへに嵐をぞきく

もりかはる軒端の月に雲すぎて時雨をのこす庭の松風

消えかへり岩間にまよふ水の沫のしばし宿かる薄氷かな

こよひたれ眞菅かたしき明かすらむそがのかはらに千鳥なくなり

枕にも袖にも涙つららゐて結ばぬ夢をとふ嵐かな

麓ゆく井堰の水や氷るらむひとり音する嵐山かな

山人の袖になれたる松のかぜ雪げになればいとどはげしき

浮雲を峰に嵐の吹きためて月のなごりを雪とみるかな

限りありて春あけがたになる年を宮も藁屋も急ぎくらしつ

おほかたに眺めし暮れの空ながらいつよりかくは思ひそめけむ

それもなほ風のしるべはあるものを跡なき波の舟の通ひ路

にほとりの隠れもはてぬさざれ水したに通はむ路だにもがな

まきの戸も鎖さで更け行くうたたねの袖にぞ通ふ道芝の露

たがためぞ契らぬ夜半を臥しわびて眺め果てつる有明の月

訪ふべしと待たぬものゆゑ萩の葉によなよな露のおき明かすらむ

今こむの宵々ごとに眺むれば月やはおそき長月のすゑ

朽ちぬべき袖の雫を絞りても馴れにし月や影はなれなむ

あかつきの嵐にむせぶ鳥の音に我もなきてぞ起き別れにし

秋の田の仮寝のはても白露に影みしほどや宵のいなづま