和歌と俳句

藤原良経

句題五十首

移り行く 人の心は 白雲の 絶えてつれなき 契なりけり

ゆきかよふ 風のつてにも なりぬれば 吹き来ぬ宵は 恋ひしきものを

忘られて 我が身しぐれの ふるさとに 云はばやものを 軒の玉水

やすらひに 頼めていでし 跡しあれば 猶まつものを 庭の蓬生

誰が秋の 心このはに 枯れにけむ 待つとしきかば 夜々も経ぬべし

深き江に 思ふ心は 水隠れて 通ふばかりの 鳰のしたみち

秋はてて 深山はげしく 吹く嵐 あらしいまはの なけの言の葉

新勅撰集・雑歌
波たかき 蟲明の瀬戸に 行く舟の 寄るべ知らせよ 沖のしほ風

恋ひわびて なくねも通ふ ことのねに 氷れる水の 下むすびつつ

わが恋は 大和にはあらぬ 韓藍の 八入の衣 ふかく染めてき