超臨界CO₂ LIVE配信セミナーの案内 2025年3月19日(水曜) 13時30分~ 16時30分 [ ZOOM オンラインセミナー ]

食材・生体適合材から太陽電池・半導体分野などでの高機能素材の創出手段」:自然溶媒の超臨界二酸化炭素(CO₂)の基本的な考え方、高分子分野等 工業的応用とその可能性、最先端半導体分野から化粧品・生体適合材・食材等の高付加価値素材の創出と称し有料オンラインセミナーを開催します。
 目次など詳細内容はこちら を参照下さい。通算22回目 ❗  
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 タイトル :超臨界二酸化炭素(CO₂)と工業的利用 ~基礎から適用技術の実際まで~ 何ができ何が必要か

スポーツフットウェアの世界的企業ナイキ社NIKEが、”製造革命”:「アスリートと地球環境の両方に貢献する」ためと称し、自然溶媒の超臨界二酸化炭素による新規染色技術 “ColorDry” を台湾で実用化展開したと発表し、アディタス社、イケア社も展開しています。
 新規高機能素材の創出を目的とした研究開発が、食品・医薬品・生体適合性分野、導電性付与・太陽電池・半導体なども含め樹脂・無機物・金属などの幅広い産業素材分野を対象に行われています。自然溶媒で環境に優しいユニークな超臨界CO₂流体の基礎特性と特異性を紹介し、海外で進んでいる実用化事例も含め、利用・適用分野を俯瞰します。神戸製鋼グループでの25年以上のプロセス開発・実用化開発での蓄積から、具体的な自社開発・適用事例を示し、実践経験に基づいた工業的利用時のプロセス開発の実際とポイントを紹介すると共に、新しい高機能素材創出のシーズ・ヒントを紹介します。
 ホームページで紹介している内容も含め、約三千倍のスケールアップ設計・プロセス実証・商業化の経験を踏まえ、実用化・工業化するために必要な構成技術、チェック項目に言及し、超臨界CO₂で何ができるか、何が必要かを紹介します。

    ・高機能素材創出のための新規技術を探している方(食材、高分子材、化成品、無機材 他)     こちらを参照下さい
・新たな機能・付加価値を付与する技術を探している方(生体適合、導電、ホール材、コンポジット 他)
・環境負荷低減、脱有機溶媒化を検討している方(NIKE社推進の無水染色、皮革なめし 他)
・超臨界二酸化炭素とは何か、何ができるのか知りたい方 (自然界に多量に存在するユニークな溶媒)
・超臨界二酸化炭素の研究・開発を検討・推進している方(「想定外」でないプロセス構築 他)

環境に優しい超臨界流体、超臨界二酸化炭素

物質は、その固有の臨界点(気体と液体が共存できる限界の温度・圧力)を超えた条件におかれたとき“超臨界流体”となり、その物質が気体・液体の状態のときとは異なるユニークな性質を示します。
 隙間のあるところにはどこにでも忍び込む気体の性質(拡散性)や、流体と相互作用のある溶質成分を溶かし出す液体の性質(溶解性)を示すだけではなく、温度や圧力などの操作条件を変えることにより拡散性や溶解性を連続的に制御可能であるという特長を持っています。
 例えば、二酸化炭素(CO₂)の臨界点は比較的低温・低圧(臨界温度31℃,臨界圧力7.4MPa)であり、それを超えると超臨界CO₂になります(右図)。
 また、無害な物質でもあり、これらの性質を利用すれば化学・食品などの製造分野で用いられる有機溶媒に代替が可能なだけでなく、界面相互作用や相の制御によるナノファブリケーション、新規なナノ材料の創生場、色素増感太陽電池や半導体デバイス多層配線用薄膜の新規形成法などの電子情報分野への活用も期待されています。
 このように優れた性質を有する超臨界CO₂利用技術は、人や環境にやさしい技術として多数の分野を対象にした研究と工業化検討が活発に行われています。
 一方、超臨界CO₂は溶媒としての物性選択肢が広範囲である、臨界圧力を超える高圧条件での運転となる、被処理物が固体である場合はバッチ運転となる、リユースCO2を使用しているとはいえ温室効果ガスとしての対策が望まれる、経済的なCO2の回収・精製・再使用のためのケーススタディを実施しなければならないなど、工業化するために多くの検討が必要です。処理物への適用可能性評価とともに、プロセス全体、装置全体の安全性も含めた最適化の検討が非常に重要です。
 工業化HPでは、超臨界CO₂利用に関する国内外の事例を紹介するとともに、実験室レベルでの検討結果を元にして工業化装置を実現する際に検討しなければならない項目、特に重要なスループット、低ランニングコストに繋がる考え方などについて紹介します。

物性値 二酸化炭素
分子量 44.01 18.015
融点[K] 216.6 273.15
沸点[K] 194.7 373.15
臨界圧力[MPa] 7.374 22.064
臨界温度[K]
     [℃] 
304.12
30.97
647.14
373.99
臨界密度[kg/m3] 468 322
圧縮係数 0.280  0.229
三重点[K]
   [kPa]
216.58
518.5
273.16
0.6117

●二酸化炭素の主要物性値

物性値 ガス 超臨界
密度[kg/m3] 0.6~1 200~900 1,000
粘度[Pa・s] 10-5 10-5~10-4 10-3
拡散係数[m2/s] 10-5 10-7~10-8 10-9

超臨界二酸化炭素の物性の特徴
 ・ 密度は液体に近く、さまざまな物質に対して溶解度が大きくなります。
 ・ 粘度は気体に近く、かつ拡散係数が液体より大きいため、物質の抽出速度が速くなります。

超臨界二酸化炭素流体利用技術の特徴
 ・ 圧力・温度を僅かに調節しただけで溶解度が大幅に変化するため、効率の良い分離が可能
 ・ 溶媒の循環使用によるランニングコストの低減が可能
 ・ 溶媒として化学的に不活性である二酸化炭素の利用が可能
   ・ 常温操作が可能なため、熱に弱い物質の取扱いが容易
   ・ 有機溶媒を使用しないため、食品に対しても安全
   ・ 安価であり、取扱いも容易

超臨界二酸化炭素の利用に当って:物性変化、相平衡の考慮
 超臨界CO₂は圧力・温度の変化によってその物性を制御することができるのが大きな特徴です。逆に、最適な条件を選定しないと適切な運転、例えば、ターンダウンが困難、スループット(処理時間)が短縮できない等の原因が見えない中での評価となってしまう場合が多々ありますので、特に注意が必要です。(利点が欠点になってしまう ! )
 温度一定の条件下では、圧力の上昇に伴って密度や粘度は徐々に大きくなります。一方、比熱、エンタルピーは臨界圧から20MPa程度までは特異な変化をし、僅かな変化で大きく変わります。
 例えば、圧力8.5MPa一定条件下で、37℃の定圧比熱は18kJ/kg・Kであるのに対し、50℃、60℃では、各々3.0 kJ/kg・K、2.1kJ/kg・Kと1/6以下に低下します。
 温度60℃におけるエンタルピーは圧力によって大きく異なり、20MPa、10MPaでは、各々628kJ/kg、728kJ/kgです。高圧である程、昇温に必要なエネルギーが少なくてよい。このため、高圧では処理できるが低圧にすると所定の温度での処理ができない、逆に高圧にすると減圧に予想以上の時間がかかる、減圧時にドライアイスが容器内で発生し容器が破損するなどの諸問題が発生します。
 処理時間が最小で運転範囲が広く、且つ、装置の安定性を保持した装置仕様を決定するためには、装置の運転操作条件下における超臨界CO₂の特徴である物性特性から推定される装置に及ぼす影響などを充分に検討することが重要です。(詳細は工業化の項を参照)
 超臨界CO₂の比誘電率は1.1~1.6、溶解度パラメータは4~20MPa1/2程度で無極性な流体であるため、水などの極性流体をほとんど溶解しません(物性図集を参照)。そこで、極性を有する助剤(エントレーナ)を添加して見かけ上の極性を付与し、極性物質の溶解度を増やすことができます。例えば、水は常温付近では超臨界CO₂にコンマ数%しか溶解しませんが、アルコールをエントレーナとして加えると数十%の水を溶解させることができます。
 以上のことから、処理費用などの経済性を検討する際には、以下の観点での最適化の検討が必須になります。
  ①処理の律速段階に応じた圧力・温度の選定(高圧の選定で助剤不使用な例もある)
  ②圧力・温度で処理速度不足の場合は助剤の選定(溶解度律速であれば良溶媒を選定)
  ③CO₂の回収・精製のし易さ(CO₂に溶解しやすいものは逆に精製しにくい)
  ④可燃/爆発性・有害性(CO2は非防爆で安全な流体,助剤使用の優劣)    など等 

  *超臨界の専門誌:・The Journal of Supercritical Fluids
  *超臨界関係の書籍 (主な保有書籍)
    ・超臨界流体のすべて 2002年(株)テクノシステム発刊
   ・Natural Extracts using Supercritical Carbon Dioxide、2000年CRC Press LLC発行、Mamata Mukhopadhyay
   ・Solubility in supercritical carbon dioxide、2007年CRC Press LLC発行、Ram B. Gupta, Jae-Jin Shim