なく蛙溝の菜の花咲にけり
どかどかと花の上なる馬ふん哉
蝶が来てつれて行けり庭のてふ
さく花の中にうごめく衆生哉
かすむ日やさぞ天人の御退屈
乙鳥にきそのみそ搗始りぬ
今来たと皃をならべる乙鳥哉
山吹にぶらりと牛のふぐり哉
蕗の葉に片足かけて鳴蛙
火の上を上手にとぶはうかれ猫
人並の正月もせぬしだら哉
すりこ木のやうな歯茎も花の春
かすむやら目が霞やらことしから
かるた程門のなの花咲にけり
大几巾や上げ捨てある亦打山
垢爪や薺の前もはづかしき
しなのぢや雪が消れば蚊がさはぐ
さをしかに手拭かさん角の迹
ちる花のわらじながらに一寝哉
木母寺の花を敷寝の蛙哉
むきむきに蛙のいとこはとこ哉
ゆうぜんとして山を見る蛙哉
陽炎や臼の中からま一すじ