和歌と俳句

柿本人麻呂歌集

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玉坂吾見人何有依以亦一目見

たまさかに我が見し人をいかならむよしをもちてかまた一目見む

■不見戀吾妹日々来事繁

しましくも見ねば恋しき我妹子を日に日に来れば言の繁けく

玉切及世定恃公依事繁

たまきはる代までと定め頼みたる君にしよりてし言の繁けく

朱引秦不経雖寐心異我不念

赤らひく肌も触れずて寐ぬれども心を異には我が思はなくに

伊田何極太甚利心及失念戀故

いで何かここだはなはだ利心の失するまで思ふ恋ゆゑにこそ

戀死戀死哉我妹子吾家門過行

恋ひ死なば恋ひも死ねとか我妹子が我家の門を過ぎて行くらむ

妹當遠見者恠吾戀相依無

妹があたり遠くも見ればあやしくも我れは恋ふるか逢ふよしなしに

玉久世清川原身祓為齋命妹為

玉くさの清き川原にみそぎして斎ふ命は妹がためこそ

思依見依物有一日間忘念

思ひ寄り見ては寄りにしものにあれば一日の間も忘れて思へや

垣廬鳴人雖云狛錦紐解開公無

垣ほなす人は言へども高麗錦紐解き開けし君ならなくに

狛錦紐解開夕谷不知有命戀有

高麗錦紐解き開けて夕だに知らずある命恋ひつつかあらむ

百積船潜納八占刺母雖問其名不謂

百積の船隠り入る八占さし母は問ふともその名は告らじ

眉根削鼻鳴紐解待哉何時見念吾

眉根掻き鼻ひ紐解け待つらむかいつかも見むと思へる我れを

君戀浦経居悔我裏紐結徒

君に恋ひうらぶれ居れば悔しくも我が下紐の結ふ手いたづらに