和歌と俳句

正岡子規

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茶博士ヲ イヤシキ人ト 牛飼ヲ タフトキ業ト 知ル時花咲ク

我ヲ睨ム 達磨ノ像ヲ タヽキワリ 洲崎通ヘバ 千鳥ナクナリ

本庄ノ 四ツ目ニ 咲ケル クレナヰノ 牡丹燃ヤシテ 悪キ歌ヲ焚ケ

寒山拾得豊干皆非ナリ 鉢栽ノ 小櫻草ノ 花綻ビヌ

頭痛ミ 寐コロビテ見ル 抱一ノ 古繪ノ椿 花玉ノ如シ

亀井戸ノ 藤ノサカリニ 群レ遊ブ 振袖少女 ウツクシト見ズヤ

一モジノ 葱ノ鉾 フリ立テヽ 悪歌ヨミヲ 打チテシヤマン

ホラホラニ ホラニ造リテ ホラアタマノ ウツロアタマト ナスベキモノヲ

ミチ足レル オモタキアタマ 穴ヲナミ 焼クトモ焼ケジカ 焼カズトモヨシ

イカニシテ 石膏ニ取ル 殊ノ外ニ 手数カヽラバ 取ラズトモヨシ

キノフワガ 造リシモノヲ 何ト思フ 観音ニアラズ 大佛ニアラズ

キニフワガ 造リシモノハ 人ガタヲ 載セテ置クベク 花彫リシ臺

古里の 伊與の二名に 君行かば 道後の櫻 散らひてあらん

おしてるや 浪花少女を めにもちて 江戸の都に 名をあぐらんか

たてまつる 香のたき物 御しるしの 御前にたかば 烟なびかん

東路の 都の花の 眞盛りを しまらく君と 別れてあらん

ヒリピンの 都さわげり しかれども そこもひすてゝ からに行く君

國寶 つるぎ携へ からへ行く 君を送りぬ 花咲く四月

もろこしの 少女がしふる 酒に醉ひ 揚子の川に 落ちて流るな

黒髪を あみて垂れたる から人も 人にしありけり 豚とな思ひそ

ゐのこ人 からのますらを はげまして オロシヤ國人 國の外へ追へ