慈姑に目をつくまでの端居かな
色に香に江戸せぬ武士や花いばら
ものいはば人はけぬべし白ぼたん
濁らずばなれも仏ぞしやがの花
一棒に角落しけり坊主麦
川ざこや紫くぐる茄子汁
聞なれて今はさもなしなすび買
古沓やくだいて入る瓜作り
聞もつけぬ名は呼びにくき水草かな
流れ流れ萍の花のさかり哉
来る秋を帆にふくんだはどこ船ぞ
山を出て海にもつかずけふの月
秋風やことし生れの子にも吹
宵月夜よき星合の定なり
栗の日や椎ももみぢものりこへつ
掘らねども山に薬のひかり哉
摂待の茶碗ぬす人泪かな
なつかしや送火にさそふ風の色
猪は季をこそ持ね冷じき
行水も日まぜになりぬ虫の声
身は老ぬ指吃れたるきりぎりす
かまきりや野分さかふてとりどりに
芋虫や半分蝶に成かかり
芦の穂や一番船の綿もよひ