和歌と俳句

正月

正月の人あつまりし落語かな 子規

正月や橙投げる屋敷町 子規

晶子
家こぞり遊べば籠の青鸚鵡ねたげに声をたつる正月

晶子
おもしろき絵を描きやると子を呼びぬ正月の来てなすことはこれ

晶子
庭に来る鳶の頭のはんてんの紺のにほひもよしや正月

晶子
わが見つる十七八の正月をよきこととして問ひ給ふかな

霜除に菜の花黄なりお正月 鬼城

晶子
手に触れて嬉しかりけり正月の緋繻子の帯の清さ冷たさ

晶子
山川のなほきはやかに寒き色なす正月の紅梅の花

晶子
しづかなる雨もよひなる正月に底ひもしらぬ白き梅咲く

晶子
正月やしもばしらさへいつしかと春のものなるここちして踏む

晶子
七人の子ぞうちつどふ正月にすでに桃李の風きたり吹く

晶子
正月は馬の蹄の音もよし間近にものの本繰るもよし

晶子
正月の炉に寄るここち限りなし一人なりせばさては知らねど

晶子
正月の家と家との間より尾振りて来れば犬もめでたし

晶子
都辺の玉を敷くてふ路よりも白くめでたき正月の箸

晶子
春立つをよろこぶ人に似る霰少し落せる正月の空

晶子
熊野より熊の牙など送られて子に語ること尽きぬ正月

晶子
正月の心の上を戯れて走ると見ゆるひる過ぎの雪

晶子
われも云ふ正月の富士高きかな真白きかなと子等に混りて

晶子
ほのかにも春の愁ひといふものをすでに覚えてをかし正月

正月や杣の遊びのふところ手 普羅

女と淋しい顔して温泉の村のお正月 放哉