内大臣実氏
しらたまは からくれなゐに うつろひぬ こずゑもしらぬ そでのしぐれに
内大臣実氏
なごりなき けふはきのふを しのべども たつおもかげは はつるひもなし
賀茂重保
あさがほの つゆのわが身を おきながら まづきえにける ひとぞかなしき
藤原親康
うつつのみ ゆめとは見えて おのづから ぬるがうちには なぐさめもなし
覚盛法師
うちぬれて たづぬるやどは むかしにて おもかげのみぞ あるじなりける
藤原親盛
かはりゆく かげにむかしを おもひいでて なみだをむすぶ 山の井のみず
前大納言光頼
ゆくひとの むすぶににごる 山の井の いつまですまむ このよなるらん
法印覚寛
とまりゐる 身もおいらくの のちなれば さらぬわかれぞ いとどかなしき
平信繁
おくれじと なげきながらに としもへぬ さだめなき世は 名のみなりけり
能蓮法師
おくれゐて しなぬいのちを うらみにて あはれかなしき 世のわかれかな
左近中将基良
ものごとに わすれがたみを とどめおきて なみだのたゆむ ときのまぞなき
法印円経
いかにせん たのむこかげの かれしより すゑはにとまる つゆだにもなし
法印昭清
うらむべき よはひならねど かなしきは わかれてあはぬ うきよなりけり
中院右大臣家夕霧
わかれにし ひはいくかにも あらねども むかしのひとと いふぞかなしき
藤原信実朝臣
やみのうちも けふをかぎりの そらにしも あきのなかばは かきくらしつつ
平泰時
やまのはに かくれしひとは みえもせで いりにし月は めぐりきにけり
返し 蓮生法師
かくれにし ひとのかたみは つきをみよ こころのほかに すめるかげかは
八條院高倉
あすかがは けふのふちせも いかならん さらぬわかれは まつほどもなし
行念法師
さだめなき よにふるさとを ゆくみづの けふのふちせは あすかかはらん
前大僧正慈円
もろびとの うづもれぬ名を うれしとや こけのしたにも けふはみるらむ