和歌と俳句

新勅撰和歌集

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

謙徳公
おりきつる くものうへのみ こひしくて あまつそらなる ここちこそすれ

藤原相如
としへぬる くもゐはなれて あしたづの いかなるさはに すまむとすらん

円融院御製
あしたづの くものうへにし なれぬれば さはにすむとも かへらざらめや

内大臣実氏
わすれめや つかひのをさを さきだてて わたるみはしに にほふたちばな

權中納言定家
おさまれる たみのつかさの みつぎもの ふたたびきくも いのちなりけり

權中納言定家
ももしきの とのへをいづる よひよひは またぬにむかふ やまのはのつき

参議雅経
うれしさも つつみなれにし そでにまた はてはあまりの 身をぞうらむる

正三位知家
あふさかの ゆふつけどりも わがごとや こえゆくひとの あとになくらん

前中納言匡房
まどろまで ものおもふやどの ながき夜は とりのねばかり うれしきはなし

按察使隆衡
かねのおとを なにとてむかし うらみけむ いまはこころも あけがたのそら

参議雅経
身のうへに ふりゆくしもの かねのおとを ききおどろかぬ あかつきぞなき

藤原宗経朝臣
あかつきの かねぞあはれを うちそふる うきよのゆめの さむるまくらに

入道二品親王道助
はつせやま あらしのみちの とほければ いたりいたらぬ かねのおとかな

正三位家隆
おもふこと まだつきはてぬ ながき夜の ねざめにまくる かねのおとかな

法印覚寛
身のうさを おもひつづけぬ あかつきに おくらんつゆの ほどをしらばや

俊頼朝臣
なにとなく くちきのそまの やまくだし くだすひぐれは ねをぞなかれる

寂然法師
つくづくと むなしきそらを ながめつつ いりあひのかねに ぬるるそでかな

法橋行賢
つくづくと くるるそらこそ かなしけれ あすもきくべき かねのおとかな

前参議俊憲
あすもありと おもふこころに はかられて けふをむなしく くらしつるかな

源光行
あすもあらば けふをもかくや おもひいでん きのふのくれぞ むかしなりける