花山院御製
世の中にふるかひもなき竹のこはわがつむ年をたてまつるなり
御返し 冷泉院御製
年へぬる竹のよはひを返しても子のよをながくなさむとぞ思ふ
和泉式部
あしかれとおもはぬ山の峰にだに生ふなるものを人のなげきは
能因法師
ひたぶるに山田もる身となりぬれば我のみ人をおどろかすかな
源仲正
三笠山さすがに蔭にかくろへてふるかひもなきあめのしたかな
平致経
君引かずなりなましかばあやめ草いかなるねをか今日はかけまし
源道済
おもひかね別れし野邊を来てみれば浅茅が原に秋風ぞふく
橘為仲朝臣
ふるさとへ我はかへりぬ武隈のまつとは誰につげよとかおもふ
左京大夫顕輔
枯れはつる藤の末葉の悲しきはただ春の日をたのむばかりぞ
高内侍
夜の鶴みやこのうちにはなたれて子を恋ひつつもなきあかすかな
大納言師頼
身のうさは過ぎぬるかたを思ふにもいまゆくすゑのことぞかなしき
大蔵卿匡房
埋れ木の下は朽つれぞいにしへの花の心は忘れざりけり
大納言伊通
今はただ昔ぞつねに恋ひらるる残りありしを思ひ出にして
清原元輔
老いてのち昔をしのぶ涙こそここら人目をしのばざりけれ
賀茂政平
ゆくすゑのいにしへばかり恋しくは過ぐる月日も歎かざらまし
藤原季通朝臣
厭ひてもなほ惜しまるる我が身かなふたたび来べきこの世ならねば
左京大夫顕輔
難波江の蘆間にやどる月みれば我が身ひとつはしづまざりけり