あまりに速く 冷えて凍れば 霰の玉 しら玉のごとも ころげたりけり
白玉か 米の粒かと 見つるらむ 雀声立てて 啄むは寒霰
いよよ疾く 乱れたばしる 霰の玉 雀騒げど 喙みもあへなく
雀子は 身ぬち暖きか 霰の玉 こまごまと消居り 羽ににじみつつ
競り啄む 雀の羽根に ましろくたまり 時の間消ゆる 霰のしら玉
いそがしき 雀の遊び 必死なれ あな暫時なれや 霰ふりさやぐ
雪の日の 笹竹がくり 啼く鶏の 鶏冠のみ紅き 冬は来にけり
重き雪の 力竹圧す しまらくを 卵にぎりて わがわらむとす
現身の 白の鶏が 今朝し 産みし暖き卵 ひとつ割りたり
この吾れに 吾れののますと しら玉の 卵をいつか 割りてゐにけり
卵わりつつ そぞろにたまる 目のなみだ 全く冬日は 寒けかりけれ
しののめの 一本の竹 雪しろし 竹に雀が 縋りつつ見ゆ
吸入器の 痒き湯気ふく しまらくを 幽かに雪も ふれなとぞ思ふ
吸入器の 湯気の触りの 頬に痒ゆく いくたびか拭きて なほ暫時あり
しみじみと 厠掃除を する人が 頬かぶりしろし 雪つもりつつ
雪霙 いよよ卍と ふるなかに あなかうがうし 明けの白鶴
かうがうし 鶴はこの世の ものならず 幽かに啼けば 生きたるらしも
清らけき 鶴の思ひの ともすれば くづるるものか 羽根一つはたく
嘴凍る 鶴の一羽は 見上げたり 雪霙霧らふ 空の暗みを
春泥の 上に求食れど 腰ほそく 清らなるかな 鶴の姿は
腰高に 頸ぶす鶴の あはれさよ 紅き頭に 雪すこしつけて
鶴と云へど ひもじきものか 松が根の 凍れる苔に 嘴つけにけり