こりもせず憂き世の闇に迷ふかな身を思はぬは心なりけり
法知らぬ人をぞ今日はうしと見る三の車に心かけねば
おのづから清き心にみがかれて玉解き懸くる法を知りぬる
いさぎよき玉を心にみがき出ていはけなき身に悟りをぞ得し
これやさは年積るまで樵りつめし法にあふこの薪なりける
いかにして聞くことのかく安からんあだに思ひて得ける法かは
雨雲を晴るるみ空の月影に恨みなぐさむ姨捨の山
いかにして恨みし袖に宿りけん出でがたく見し有明の月
鷲の山月を入りぬと見る人は暗きに迷ふ心なりけり
悟り得し心の月の顕れて鷲の高嶺に澄むにぞありける
雲晴るる鷲のみ山の月影を心澄みてや君ながむらん
ゆくすゑのためにと説かぬ法ならば何か我が身に頼みあらまし
散り敷きし花のにほひの名残多み立たま憂かりし法の庭かな
何事も空しき法の心にて罪ある身とはつゆも思はじ
鷲の山上暗からぬ峰なればあたりを払ふ有明の月
いかなれば塵に交りてます鏡つかふる人は清まはるらん
罪人のしぬる世もなく燃ゆる火の薪なるらんことぞかなしき
朝夕の子を養ひにすと聞けば苦にすぐれてもかなしかるらん
神楽歌に草取り飼ふはいたけれど猶その駒になることは憂し
よしなしな争ふことを楯にして怒りをのみも結ぶ心は
ありがたき人になりけるかひありて悟り求むる心あらなん
雲の上の楽しみとてもかひぞなきさてしもやがて住みしはてねば