金葉集・冬
寒からば夜はきて寝よみ山鳥いまは木の葉も嵐吹くなり
金葉集・別離
この頃は宮城野にこそまじりけれ君を牡鹿の角もとむとて
詞花集・春
春日野に朝なく雉のはねおとは雪のきえまに若菜つめとや
詞花集・恋 小倉百人一首
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな
新古今集・春
梅が枝にものうきほどに散る雪を花ともいはじ春の名だてに
新古今集・春
はるさめのそぼふる空のをやみせず落つる涙に花ぞ散りける
新古今集・春
雁がねのかへる羽風やさそふらむ過ぎ行くみねの花も残らぬ
新古今集・冬
名取川やなせの浪ぞ騒ぐなる紅葉やいとどよりてせくらむ
新古今集・冬
夏刈の荻の古枝は枯れにけり群れ居し鳥は空にやあるらむ
新古今集・冬
白浪にはねうちかはし濱千鳥かなしきものはよるのひと聲
新古今集・恋
筑波山はやましげやましげれども思ひ入るにはさはらざりけり
新古今集・恋
霜の上に今朝ふる雪の寒ければ重ねて人をつらしとぞ思ふ
新古今集・恋
山城の淀のわか菰かりに来て袖濡れぬとはかこたざらなむ
新古今集・恋
思ひやるよその村雲しぐれつつあだちの原に紅葉しぬらむ
新勅撰集・春
いろさむみ はるやまだこぬと おもふまで やまのさくらを ゆきかとぞみる
続後撰集・春
春立ちて 程やへぬらむ しがらきの 山はかすみに うづもれにけり
続後撰集・秋
織女の わかれし日より 秋風の 夜ごとにさむく なりまさるかな
続後撰集・恋
あしのやの こやのしのやの しのびにも 人にしられぬ ふしをみせなむ
続後撰集・恋
おもひやれ わが衣手は 難波なる あしのうら葉の かわくよぞなき
続後撰集・雑歌
おもひいでて かなしきものは 人しれぬ 心のうちの わかれなりけり