和歌と俳句

源頼政

十一 十二

いとはるる 身をうらむるや 恋ひしさに またことごとを 思ひますらむ

我が恋を さてや忘ると 思へども 起きてわびし 寝てもすべなし

逢ふ人も なき恋路ゆく 苦しさに やすむ間とては 身をぞうらむる

忘れつつ なほぞ恋ひしき 身の程を 思ひ知るには 思ひ病めども

ふるさとを 見ればものこそ 悲しけれ 我も荒れにし 心なれども

思ふこと したにもまるる まろすずの 露ばかりだに かなはましかば

あめもよに 思ひ出でじと 思へども 思ふ心を 洩らす今日かな

あめもよに 思ふ心の 洩りげにや あやしく濡るる 我が袂かな

ひと心 変ればあけぬ まきのとを 来なれし駒ぞ 過ぎがてにする

わたり来ぬ 妹がすみかを たづぬれば あふくま川の あなたなりけり

すみよしの まつとはすれど 沖つ波 たちかへるにも よらぬ君かな

うち過ぎし のかみの里の 妹をみで かへり下るは 涙なりけり

逢ふことを 命にかふる 市もがな かかる恋する 人やつたふと

今はただ 身をうらみつつ 泣くものを しひてこふとや 妹はきくらむ

こひ死なむ 後ははかなき たまづさを もしや見るとて 書きぞ置かるる

世の中を 嘆かぬ程の 身なりせば 何によそへて 妹を恋ひまし

しきたへの 枕は二つ 並ぶれど 一つはなれす 君しなければ

千載集・恋
人はいさ あかぬ夜床に とどめつる 我が心こそ 我を待つらめ

堰きもあへず 離れて落つる 涙かな 我がそばたつる たき枕より

奥山の 杉のともすり 我なれや 我が恋ゆゑに 身を焦がすなり