和歌と俳句

源頼政

十一 十二

たなばたの 契りばかりも ありと見ば 訪はぬ絶え間も 嘆かざらまし

君を我 あきこそ果てね 色かはる を見よかし ひらけだにせず

いさやこの ひらけぬも 頼まれず 人の心の あきはてしより

ひらけぬを あき果てぬとや 見しの 頼む方なく うつろひにけり

うつろはば ばかりをぞ うらむべき わが心には あきし無ければ

逢はぬ間は いかがと思ひし 疑ひも なくなく今日ぞ 人は恋ひしき

日を経つつ 恋ひしきことは まされども 恋ひする路に えこそやすまね

ふみ見ては 色まさりぬる わが袖や くれなゐ染めの ふりてなるらむ

まちまちて 何ここちせむ たまづさを おなじさまにて かへしえたらば

知らすなよ つぼね並びの したくちは ものいひあしき みやとこそきけ

みちのくの かねをばこひて ほる間なし 妹がなまりの 忘られぬかな

数ならで いひ出でむことを とどめつる 憂き身や恋の せきとなるらむ

何かその 君が下紐 結ぶらむ 心しとけは それもとけなむ

つれもなき 人は稀にも 見え来ぬに 目なるるものは 泪なりけり

冬来れば 駒うちわたす 諏訪の湖の いくへとぞ無き 人のつららは

今はさは 恋ひも死ななむ 死なずとて つれなき人の 来ても見なくに

妹ならば ひたひの髪を ふりかけて つたふ涙を 玉と貫かまし

絞りあへぬ はなそめ衣 袖白く かへしのみして 逢はぬ君かな

わが心 なにおほはらに つくすらむ すみよかるべき 人のさまかは

などて我 よそなる袖を 濡らすらむ 折ればぞ萩の 露も零るる