和歌と俳句

武蔵野

子規
武蔵野の 萩わけゆけば わが袖に 結ぶとしらで 結ぶ

子規
むさしのの しののをすすき かたよりに なびけば残る 有明の月

子規
むさしのの 尾花の末は さだかにて 月よりさきに 落る雁金

子規
秋風の ふくとも見しか むさしのの 尾花をわけて 人の行く也

子規
武蔵野に月あり八百里

子規
むさし野は稲よりのぼる朝日哉

子規
紫の一本やいづれむさし野の草むらがくれ菫咲く

子規
武蔵野や畠の隅の花芒

子規
見ればただ尾花風吹くむさしのの月入る方や限りなるらん

子規
武蔵野の冬枯芒婆婆に化けず梟に化けて人に売られけり

漱石
武蔵野を横に降る也冬の雨

晶子
むさし野の蒲田の薔薇の園を行く夕闇どきの水の音かな


むさし野の大根の青葉まさやかに秩父秋山みえのよろしも


武藏野の秋田は濶し椋鳥の筑波嶺さして空に消につゝ

晶子
むさし野は百鳥すめり雑木の林につづくかや草の原

牧水
武蔵野は落葉の声に明け暮れぬ雲を帯びたる日はそらを行く

迢空
むさし野は ゆき行く道のはてもなし。かへれと言へど、遠く来にけり

晶子
秋の草みなしろがねの竹に似ぬ野分の通るむさし野の原

白秋
武蔵野のだんだん畑の唐辛子いまあかあかと刈り干しにけれ

赤彦
武蔵野の芒の梟買ひに来ておそかりしかば灯ともしたり

赤彦
暮れて洗ふ大根の白さ土低く武蔵野の闇はひろがりて居り

晶子
むさし野の野方の村を踏むと云ふことにはまして身に沁みし路

晶子
雨降るや丘低くして滑らかに畑林などつらなる武蔵

晶子
むさしのの野方の路に雨降りぬ六月いまだ涼しきゆふベ



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