和歌と俳句

後撰和歌集

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よみ人しらず
逢ふことを淀にありてふ御津の森つらしと君を見つるころかな

返し よみ人しらず
御津の森もるこの頃のながめには怨みもあへず淀の河浪

よみ人しらず
憂き世とは思ふものから天の戸のあくるはつらき物にぞありける

よみ人しらず
怨むれど恋ふれど君が世とともに知らずかほにてつれなかるらむ

返し よみ人しらず
怨むとも恋ふともいかが雲井より遙けき人を空に知るべき

よみ人しらず
しづ機にへつる程なり白糸の絶えぬる身とは思はざらなむ

返し よみ人しらず
へつるより薄くなりにししづ機の糸は絶えてもかひやなからむ

よみ人しらず
来ることは常ならずとも玉かづら頼みは絶えじと思ふ心あり

返し よみ人しらず
玉かづら頼めくる日の數はあれど絶え絶えにてはかひなかりけり

よみ人しらず
いにしへの心はなくやなりにけむ頼めしことの絶えて年ふる

返し よみ人しらず
いにしへも今も心のなければぞ憂きをも知らで年をのみふる

よみ人しらず
絶えたりし昔だに見し宇治橋を今は渡るとおとにのみきく

よみ人しらず
忘られて年ふるさとの郭公なににひとこゑ鳴きてゆくらむ

よみ人しらず
とふやとて杉なき宿に来にけれど恋ひしきことそしるべなりける

よみ人しらず
露の命いつともしらぬ世の中になだかつらしと思ひおかるる

よみ人しらず
かり人のたづぬる鹿はいなみ野に逢はでのみこそあらまほしけれ

右大臣師輔
小山田の水ならなくにかくばかり流れそめては絶えむものかは

これひらの朝臣のむすめいまき
月にだに待つ程おほく過ぎぬれば雨もよにこしと思ほゆるかな

よみ人しらず
思ひつつまたいひそめぬわが恋をおなし心に知らせてしがな

よみ人しらず
あすか河心の内に流るれば底のしがらみいつかよどまむ