沙山に、合歓木と 槐と あはれなり。夕しほ風に、なべて ゆれつつ
合歓木 槐 深く垂れつつ 梢低し。沙風 枝を吹き潜りつつ
沙原に、雨近からむ。ねむの花 赤も 高焉@色深まりぬ
沙山は 既にしづまるねむの梢━花こまやかに ゆれてゐるなり
日のくもり ゆふべに似たり。ひぐらしや 声みじかくて、ふたたび 鳴かず
曇りつつ 夕づくらむか。沙山のねむの葉むらは、いまだねなくに
ねむの葉や すでに睡れる丘の沙 木梢は赤し。ねむの夕花
沙原に 沙の吹き立つかげ ありて━見れば、静かに移ろひにけり
沙原に 沙の流らふ音すらし。鴉二羽ゆく。頭よぎりて
はろばろの わたの沙原。時をりに 鴉ゐるらし━声 起りつつ
このあたりまで 来て━波おとのなかりけり。沙こまやかに うへ堅くあり
いきどほろしく来て、浜ばうふうを抜きにけり。茎白じろと 太りゐにけり
白々と ばうふうの茎 太りたり。根を見れば、赤く染みてゐるなり
ねむ ゑんじゆ 立ち静まれるま昼凪ぎ。沙山いよよ かすみつつゆく
かくしつつ すべにまどへり。沙山の沙にうもるる わが身ならまし