春山友鶯鳴別誉益間思御吾
春山の友うぐひすの泣き別れ帰ります間も思ほせれ我れを
冬隠春開花手折以千遍限恋渡鴨
冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも
春山霧惑在鶯我益物念哉
春山の霧に惑へるうぐひすも我れにまさりて物思はめやも
出見向岡本繁開在花不成不止
出でて見る向ひの岡に本茂く咲きたる花のならずはやまじ
霞發春永日恋暮夜深去妹相鴨
霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆく妹も逢はぬかも
春去先三枝幸命在後相莫恋吾妹
春さればまづさきくさの幸くあらば後にも逢はむな恋ひそ我妹
春去為垂柳十緒妹心乗在鴨
春さればしだり柳のとををにも妹は心に乗りにけるかも
天漢水左閇而照舟竟舟人妹等所見寸哉
天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや
久方之天漢原丹奴延鳥之裏歎座都乏諸手丹
ひさかたの天の川原にぬえ鳥のうら泣きましつすべなきまでに
吾戀嬬者知遠往船乃過而應来哉事毛告火
我が恋を夫は知れるを行く舟の過ぎて来べしや言も告げなむ
朱羅引色妙子数見者人妻故吾可戀奴
赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに我恋ひぬべし
天漢安渡丹船浮而秋立待等妹告与具
天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に告げこそ
従蒼天往来吾等須良汝故天漢道名積而叙来
大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し