和歌と俳句

正岡子規

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面白く なくせみの音も うらめしや なくになかれぬ 我身にしあれば

ならわねば 迷ふものとは しりながら けふいりそめぬ 戀の山路に

いりそめん 事もつらしや 戀の山 たすけたのまん 人しなければ

いかでかは いらでややまん こひの道 後にいかなる 事のありとも

道ならぬ 道とはしれど 道芝を ふまぬ人なき 道はこのみち

思ひ見れば 迷ひつめたる 戀の道 後へひかれず さきへすすまず

烏羽玉の くらさにまよふ 戀の道 後も前も しらぬばかりに

くすしらの いやしかねたる いたつきも いざいりて見ん 伊與のいで湯に

たきつなす 涙のたねは つくるとも つきせぬものは 思ひなりけり

かくすとも 誰かはしらん 戀の道 きのふにかわる けふの思ひを

事にふれ 思ひ出すてふ 事もなし うつつにあらぬ 時のなげきは

かくまでに 戀路は人を たたすかな 後に悔ゆべき 事のみなるに

いづくとて 尋ねんかたも しら浪の まにまにうかぶ 戀もするかな

中々に あひ見ん事は かなうまじ 玉づさつたふ よしもなければ

いひ出して つれなからばと 思ふ身は 人しれず身を こがす蛍か

人目をば しのぶの里の 杜鵑 音にこそなかね 思ひそめてき

うたたねの 夢に思ひの やみもせば かくまでうきを かさねまじきを

浅からぬ 根さしも見する 深緑 思ましなの 池のあやめは