和歌と俳句

初日

枯草にまじる蓬の初日かな 水巴

ゆめもなく覚めたる軒の初日かな 石鼎

松上にしばし曇りし初日かな 石鼎

枯れ乾く尾花なほある初日かな 石鼎

初日さす船場守りの観世音 喜舟

初日さす鶏に菜を刻むかな 喜舟

長命の媼に積藁の初日かな かな女

傍らの子にも初日のさして来ぬ かな女

柚の色の一霜づつや初日影 石鼎

古家や枸橘よりぞ初日影 石鼎

大濤にをどり現れ初日の出 虚子

初日人銀杏落葉を踏んで来る 石鼎

初日の出護摩焚く天の一方に 石鼎

茂吉
ひと年のはじめのあかり差しそむるそがひの山に群鳥のこゑ

樵りぐちのくろずむ枝も初日影 石鼎

奥山や枯木の穂にも初日影 石鼎

初日門枯れ太幹とならびたる 石鼎

初日さす松はむさし野にのこる松 秋櫻子

田にゐたる鴨が初日をよぎり飛ぶ 秋櫻子

初日まつ心しづかにたかぶりぬ 風生

世のさまのしかはあれども初日影 風生

あらたまのたまの碧瑠璃初日して 石鼎

らんらんとのぼる初日や霜の上 石鼎

針葉林しづかに出でて初日なる 信子

初日かげ積雪の牙に潮なぎぬ 蛇笏

大いなる初日据りぬのぼるな 石鼎

やや高く見えてまどかの初日かな 石鼎

不平消して永久に明るし初日影 石鼎

枯芝の上にさしたる初日かな 万太郎

はつ日出て岬のしりぞく海波かな 蛇笏

ひとりゆく砂丘の雪や大初日 蛇笏