和歌と俳句

避暑

鞄積み重ねて避暑の宿らしく 虚子

避暑人も町人も来る大湯あり たかし

避暑の宿落葉松林とりかこみ 虚子

山の避暑かはりがはりの泊り客 虚子

貸しあへる鏡や帯や避暑の宿 立子

風呂焚くもたのしきものよ避暑の荘 立子

避暑に来て一と日帰農の友を訪ふ 虚子

避暑の荘水栓一滴一滴洩る 誓子

避暑の宿蚋を怖れて戸を出でず 虚子

避暑宿に来ても変らぬ起居かな 虚子

避暑の宿寂寞として寝まるなり 虚子

午前九時始まる避暑の日課かな 虚子

避暑に来て短か羽織を仮りに著て 虚子

蠅叩われを待ちをる避暑の宿 虚子

山寺に避暑の命を托しけり 虚子

避暑の緑雲烟に乗る心地あり 青畝

低き雲避暑の衣袂をうるほせり 青畝

夜の富士心にねむる避暑の荘 虚子

風雪にいたみし山の荘に避暑 虚子

心足り即ち下山避暑五日 虚子

楽しさや避暑二日目の朝掃除 立子

朝の蜘蛛殺さで払ふ避暑の荘 虚子

避暑の荘富士山を皆持つてゐる 虚子

避暑荘にかく居ることの老後かな 風生

ぞろぞろと早朝の客避暑の宿 立子

避暑たのし足りなきものは隣より 立子

避暑の日は三日五日と経ち易し 風生

堆書見ゆ避暑山荘の障子より 爽雨

金色に光る朝日よ避暑の寺 立子

高嶺の日しづむに間あり避暑の町 青畝

避暑行の蔵王の一の鳥居大 爽雨

たばこ屋へ村道歩くことも避暑 爽雨

日向恋ふごとく避暑人森を出づ 爽雨

馬柵の戸のごときに避暑の友を訪ふ 爽雨

避暑地より檄をとばせば諸子来たる 青畝

避暑荘の何一つ不足なき不足 風生