北原白秋

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春日照る 庭の枯芝 しづかやと ただ白くもぞ 観てを居りける

蝶の飛ぶ 春なるかなと 見てをるを 小鳥ぞといふに 微笑尽きず

春日照る 庭の芝生を 鶏じもの 我は掻きをり 白けたる芝

冬旱 長かるあひだ 乾び来し 雑の落葉も はららき失せぬ

うちしらけ 色無き芝生 下萌えず 日は春にして 眼霧らひ泣かゆ

うち見には 枯山芝生 春日照り ねもごろ聞けば 濃すみれ咲きぬ

吾が犬の 呆けてあくなき い寝ざまに うらら春日の 照りこそなごめ

春といへば 菓子などめして 犬じもの 我の坐しけり 渇くものから

口出づる 「おばこ」のどかや 用のない 煙草売など 春はふれて来る

我がこもり 春は匂へば 照り美し 物のあいろよ 強ひてしも見ず

成城十九番地 月まどかなる 春夕の 暮れつつはありて 明りつつあり

花ひとつ 枝にとどめぬ 玉蘭の 夏むかふなり 我も移らむ

和歌と俳句