新蕎麦や熊野へつゞくよしの山 許六
みよし野やころび落ても花の上 千代女
みよし野に花盗人はなかりけり 蕪村
雲を呑で花を吐なるよしの山 蕪村
利玄
汽車のろく裾山ぞひを行くなべに手のとどくところにも丹躑躅咲ける
利玄
おく山はこのおそ春も冷ゆるなり残れる櫻に霧のつゆ凝る
利玄
みよしののうら谷さむく霧しまき繁み立つ杉の梢こぞり鳴る
利玄
岨みちの蕨折りためゆきしかば手つめたしも山のさ霧に
凍雲のしづかに移る吉野かな 草城
茂吉
伯母峰の峠のうへにかへりみる吉野の山は大きしづけさ
茂吉
春の日はきらひわたりてみよしのの吉野の山はふかぶかと見ゆ
茂吉
春の日は午を過ぎつつみよしのの山の杉生は陰をつくりぬ
みよしのや青水無月の青山の 草城
みなつきの吉野は朝日子のはやき 草城
みよしののどんぞこの田の植ゑ終り 青畝
青吉野鍾乳洞を匐うて出る誓子