藤原滋幹
ちはやふる神ひきかけて誓ひてしこともゆゆしくあらがふなゆめ
右大臣師輔
おもひには我こそいりてまとはるれあやなく君や涼しかるべき
元平のみこのむすめ
あらたまの年も越えぬる松山の浪の心はいかがなるらむ
よみ人しらず
わがためはいとど浅くやなりぬらむ野中の清水ふかさまされば
源中正
近江路をしるべなくても見てしがな関のこなたはわびしかりけり
返し しもつけ
道しらでやみやはしなぬ相坂の関のあなたは海といふなり
よみ人しらず
つれなきを思ひしのぶの眞蔓はてはくるをも厭ふなりけり
左大臣実頼
今更に思ひいでじとしのぶるを恋ひしきにこそ忘れわびぬれ
はせをの朝臣
わがためは見るかひもなし忘草わするばかりの恋にしあらねば
藤原ありよし
あひ見てもつつむ思ひのわびしきは人まにのみぞねは泣かれける
よみ人しらず
を山田の苗代水は絶えぬとも心の池のいひははなたじ
よみ人しらず
千世へむと契りおきてし姫松のねさしそめてし宿は忘れじ
源重光朝臣
これを見よ人もすさめぬ恋すとて音を鳴く蟲のなれるすがたを
是則
逢ひみては慰むやとぞ思ひしに名残しもこそ恋ひしかりけれ