和歌と俳句

後撰和歌集

前のページ< >次のページ

藤原滋幹
ちはやふる神ひきかけて誓ひてしこともゆゆしくあらがふなゆめ

右大臣師輔
おもひには我こそいりてまとはるれあやなく君や涼しかるべき

元平のみこのむすめ
あらたまの年も越えぬる松山の浪の心はいかがなるらむ

よみ人しらず
わがためはいとど浅くやなりぬらむ野中の清水ふかさまされば

源中正
近江路をしるべなくても見てしがな関のこなたはわびしかりけり

返し しもつけ
道しらでやみやはしなぬ相坂の関のあなたは海といふなり

よみ人しらず
つれなきを思ひしのぶの眞蔓はてはくるをも厭ふなりけり

左大臣実頼
今更に思ひいでじとしのぶるを恋ひしきにこそ忘れわびぬれ

はせをの朝臣
わがためは見るかひもなし忘草わするばかりの恋にしあらねば

藤原ありよし
あひ見てもつつむ思ひのわびしきは人まにのみぞねは泣かれける

よみ人しらず
を山田の苗代水は絶えぬとも心の池のいひははなたじ

よみ人しらず
千世へむと契りおきてし姫松のねさしそめてし宿は忘れじ

源重光朝臣
これを見よ人もすさめぬ恋すとて音を鳴く蟲のなれるすがたを

是則
逢ひみては慰むやとぞ思ひしに名残しもこそ恋ひしかりけれ