和歌と俳句

後撰和歌集

前のページ< >次のページ

よみ人しらず
ながめしてもりもわびぬる人目かないつか雲間のあらむとすらむ

よみ人しらず
おなじくは君とならひの池にこそ身を投げつとも人にきかせめ

よみ人しらず
かげろふのほのめきつれば夕暮れの夢かとのみぞ身をたどりつる

返し よみ人しらず
ほの見ても目なれにけりと聞くからに臥し返りこそしなまほしけれ

源よしの朝臣
あふみてふ方のしるべも得てしがな見るめなきこと行てうらみむ

返し 春澄善縄朝臣女
相坂の関ともらるる我なれば近江てふらむ方もしられず

よしの朝臣
あしひきの山した水の木隠れてたぎつ心を堰きぞかねつる

返し よみ人しらず
木がくれてたぎつ山水いづれかは目にしも見ゆる音にこそきけ

貫之
暁のなからましかば白露のおきてわひしき別せましや

返し よみ人しらず
おきて行く人の心を白露の我こそまづは思ひ消えぬれ

よみ人しらず
高砂の松といひつつ年をへて変はらぬ色ときかば頼まむ

貫之
風をいたみくゆる煙の立ち出でても猶こりすまのうらぞ恋ひしき

よみ人しらず
いはねどもわが限なき心をば雲居にとほき人も知らなむ

よみ人しらず
きみがねにくらぶの山の郭公いづれあだなる聲まさるらむ

よみ人しらず
恋ひて寝る夢路に通ふたましひの馴るるかひなく疎き君かな

よみ人しらず
篝火にあらぬおもひのいかなれば涙の河に浮きて燃ゆらむ

よみ人しらず
待ち暮す日は菅の根に思ほえて逢ふよしもなど玉の緒ならむ

よみ人しらず
はかなかる夢のしるしにはかられてうつつに負くる身とやなりなむ

よみ人しらず
思ひ寝の夢といひてもやみなまし中々何に有りと知りけむ