南院式部卿のみこのむすめ
わがたちてきるこそうけれ夏衣おほかたとのみ見べきうすさを
よみ人しらず
やへむぐら鎖してし門を今更に何にくやしく開けて待ちけむ
源庶明朝臣
さを鹿の妻なき恋を高砂の尾上の小松ききもいれなむ
返し よみ人しらず
さを鹿の聲たかさごに聞こえしは妻なき時のねにこそありけれ
よみ人しらず
せきもあへず涙の河の瀬を早みかからん物と思ひやはせし
よみ人しらず
瀬を早み絶えず流るる水よりも絶えせぬ物は恋にぞありける
よみ人しらず
恋ふれども逢ふよなき身は忘草夢路にさへや生ひ茂るらむ
よみ人しらず
世の中の憂きはなべてもなかりけり頼むかぎりぞうらみられける
よみ人しらず
夕されば思ひぞしげき待つ人の来むやこしやの定なければ
源よしの朝臣
いとはれてかへりこしぢの白山は入らぬに迷ふ物にぞありける
よみ人しらず
人なみにあらぬわが身は難波なる葦のねのみぞ下に流るる
よみ人しらず
白雲のゆくべき山はさだまらず思ふ方にも風はよせなむ
よみ人しらず
世の中に猶ありあけの月なくて闇に迷ふをとはぬつらしな
贈太政大臣時平
あすか河せきてとどむる物ならば淵瀬になるとなどかいはれむ
右近
身をつめばあはれとぞ思ふ初雪の降りぬることも誰にいはまし
よみ人しらず
冬なれど君がかきほに咲きければむべ常夏に恋ひしかりけり
兼輔朝臣
白雪のけさは積もれる思ひかな逢はでふる夜の程も経なくに
返し よみ人しらず
しらゆきの積もる思ひも頼まれず春より後はあらじとおもへば
よみ人しらず
わが恋し君があたりを離れねば降る白雪も空に消ゆらむ
返し よみ人しらず
山隠れ消えせぬ雪のわびしきは君まつのはにかかりてぞふる
藤原ときふる
あらたまの年はけふあす越えぬべし相坂山を我やおくれむ