和歌と俳句

松尾芭蕉

貧山の釜霜に啼声寒し

苦く偃鼠が咽をうるほせり

くれくれてを木魂のわびね哉

世にふるもさらに宗祇のやどり哉

夜着は重し呉天にを見るあらん

あられきくやこの身はもとのふる柏

琵琶行の夜や三味線の音霰

宮守よわが名をちらせ木葉

いかめしき音やの檜木笠

冬牡丹千鳥よ雪のほととぎす

明ぼのやしら魚しろきこと一寸

あそび来ぬふく釣かねて七里迄

鰒釣らん李陵七里の浪の雪

此海に草鞋すてん笠しぐれ

馬をさへながむる の朝哉

しのぶさへ枯て餅かふやどり哉

かさもなき我をしぐるるかこは何と

狂句こがらしの身は竹斎に似たる哉

草枕犬も時雨るかよるのこゑ

市人よ此笠うらふ雪の傘

雪と雪今宵師走の名月歟

海くれて のこゑほのかに白し

年暮ぬ笠きて草鞋はきながら

黒森をなにといふともけさの

火を焚て今宵は屋根の消さん