和歌と俳句

與謝蕪村

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蓼の穂を真壺に蔵す法師かな

甲斐がねや穂蓼の上を塩車

黄に咲くは何の花ぞもの中

鮎落て宮木とどまる麓かな

鮎おちて焚火ゆかしき宇治の里

泊る気でひとり来ませり十三夜

後の月かしこき人を訪ふ夜哉

後の月鴫たつあとの水の中

三井寺に緞子の夜着や後の月

梺なる我蕎麦存す野分哉

市人のよべ問かはすのはきかな

客僧の二階下り来る野分

鳥さしの西へ過けり秋の暮

限りある命のひまや秋の暮

淋し身に杖わすれたり秋の暮

一人来て一人をとふや秋の暮

親法師子法師も稲を担ひゆく

したゝかに稲荷ひゆく法師哉

折くるゝ心こぼさじ梅もどき

梅もどき折や念珠をかけながら

梅もどき鳥ゐさせじとはし居かな

柿崎の小寺尊し梅もどき

このもよりかのも色こき紅葉

山暮れて紅葉の朱を奪ひけり

二荒紅葉が中の朱の橋