蓼の穂を真壺に蔵す法師かな
甲斐がねや穂蓼の上を塩車
黄に咲くは何の花ぞも蓼の中
鮎落て宮木とどまる麓かな
泊る気でひとり来ませり十三夜
後の月かしこき人を訪ふ夜哉
後の月鴫たつあとの水の中
梺なる我蕎麦存す野分哉
市人のよべ問かはすのはきかな
客僧の二階下り来る野分哉
鳥さしの西へ過けり秋の暮
限りある命のひまや秋の暮
淋し身に杖わすれたり秋の暮
一人来て一人をとふや秋の暮
親法師子法師も稲を担ひゆく
したゝかに稲荷ひゆく法師哉
折くるゝ心こぼさじ梅もどき
梅もどき折や念珠をかけながら
梅もどき鳥ゐさせじとはし居かな
柿崎の小寺尊し梅もどき
このもよりかのも色こき紅葉哉
山暮れて紅葉の朱を奪ひけり