昼比にもどりてたたむふとん哉
丘の馬の待あき顔や大根引
大根引一本づつに雲を見る
親も斯見られし山や冬籠
鷹それし木のつんとして月よ哉
かれ芒人に売れし一つ家
おのが身になれて火のない火燵哉
くわんくわんと炭のおこりし夜明哉
赤い実もはかり込だる粉炭哉
炭もはや俵の底ぞ三ケの月
鰒好と窓むきあふて借家哉
浅ましき鰒や見るらん人の顔
初雪のふはふはかかる小鬢哉
初雪や誰ぞ来よかしの素湯土瓶
ゆで汁のけぶる垣根也みぞれふる
酒菰の戸口明りやみぞれふる
けしからぬ月夜となりしみぞれ哉
鳥の羽のひさしにさはる寒哉
川縁や炬燵の酔をさます人
けろけろと師走月よの榎哉
年已暮んとす也旅の空
ぱちばちと椿咲けり炭けぶり
衛士の火のますますもゆる霰哉
ぼんのくぼ夕日にむけて火鉢哉
木がらしや地びたに暮るる辻諷ひ