和歌と俳句

正岡子規

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事の成ると 否とにあらず よしやわれ 死にする命 君の國のため

中つ國の 民と生れて 黄の河の 澄めらん御代に 逢はでやまめや

國のため 命をすてし わが友に おくれてあらん われならなくに

國のため 死にする我を 日の本の やまとの人よ あはれとは見よ

車をな いたくなはせそ 道の邊の 櫻の花の 散るがおもしろ

眞日向ひ 行けばかぶつく 野を過ぎて 車引き入るゝ 森の下風

人の庭の 花野ゆかしみ 白髭や 寺島村へ 車おほせつ

田舎路を わが乗る車 とどろきて 冬田の畔の 雁さわぐなり

たはれをの 車十あまり 夕闇の 山下道を 聲かけて行く

都邊は 路たひらかに 音もせぬ 片輪車の 行方はるけく

汽車に寐ねて 夢驚けば 知らぬ國の 知らぬみ山に 月傾きぬ

はらからの 別れを惜む 門口に かばんのせたる 車待ち居り

路の邊に 車とどめて 櫻花 折りげに見ゆる ふらんすをとめ

大君が 東下りの めし車 来て見るたびに 昔おもほゆ

あきつ神 我大君の めし車 雲井のみ橋 いわたらす見ゆ

おしてるや 難波へ通ふ 船はあれど 波をかしこみ 車にぞのる

賣れ残る 黄菊白菊 積みあげて 歸る車や 大路小路の霜