和歌と俳句

正岡子規

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あらたての 草のいほりを ゆるがして 鉢に栽ゑたる 牡丹のて来つ

おくり物 牡丹の花の 紅に 草の庵は 光立ちけり

こいまろぶ 病の床の くるしみの そのかたはらに 牡丹咲くなり

わが友の 厚き心の おくり物 牡丹の花の 散らまくをしも

くれなゐの 牡丹の花の 咲きしより 庭の千草は 色なかりけり

たく衾 さわやが下の いたつきに 牡丹の花を 見れば悲しも

いちはやく 牡丹の花は 散りにけり 我がいたつきの いまだ癒えなくに

照りはゆる 牡丹の花の かたはらに あはれに見ゆる 鐡線の花

我家の 家の寶を 人問はば 秀眞が鑄たる 茶托五枚あり

鰹節 紙に包みて 水引に 松と薔薇とを くゝりそへて遣る

米なくば 共にかつゑん 魚あらば 片身分けんと この妹このふ

高砂の 尾上の松は 枯るゝとも 君が契は 久しかれと思ふ

みちのくの 末の松山 知らねども 君が枕に 波はこえめや

共に泣き 共にうたはば 春の朝 秋の夕の 淋しくもあらじ

よき妻を 君は娶りぬ 妻はあれど 殊にかなひぬ 君が妻君に

誰も娶り かも娶り君も 娶りけり 一人娶らぬ吾 吾を憐む

君が庭に 植ゑば何花 合歓の花 夕になれば 寐る合歓の花

出雲なる 結ぶの神は 赤き縄を 君が衣に いつ結びけん

をりふしの いさかひ事は ありもせめ 犬がくはずば 猫にやれこそ

庭に生ふる 蓬が中の 戀草は 花咲きにけり 實や結ぶらん