和歌と俳句

正岡子規

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大森の 里過ぎ行けば 蜑が住む 海苔麁朶垣の さかりなり

借りて住む 磯の家居は 海見えて 白帆行くなり 葦垣の外に

杉垣を めぐらす庭の 狭けれど 春も花咲く 秋も花咲く

杉垣を 右に曲りて 左せよ 桃さくところ 先生の家

年を経し 神の忌垣は 荒れにけり 紅はげて 春雨のふる

亡き友を 埋めし墓の かなめ垣 茂るを見れば 我老いにけり

垣をあらみ 垣間見見れば 池廣く 白き鳥浮き 善き住居なり

庭中に 稲荷を祭る 古家の 杉垣低く 幟立つ見ゆ

梅残り 椿つぼめる 賤が家の 垣根にそひて 曲り曲り行く

霞む日を うてなに上り 山を見る 山遠くして 心はるかなり

山近く いほり結びて 永き日を ただ山を見る 人となるべく

三條の 橋の袂の 絲柳 しだれて長し 擬寶珠の上に

輪に結ぶ 柳の枝を きり解けば 畳の上に はねてはらはら

みちのくの 岩手の牧場 草萌えて 千里行く馬の 子もいはゆなり

いたつきに ひとり臥し居る ふらんすの 玉の臺に 君は住むとふ

明日は 君だち来ます 天気善く よろしき歌の 出来る日であれ

我庵に 人集まりて 歌詠めば 鉢のに 日は傾きぬ

あら土の 鑄形くづせば あな尊 佛の姿 あらはれにけり

市中に 庵しをれば 我庭の 花咲きたれど 蝶の乏しき

日の本の ますらたけをが 太刀佩きて から討ちに行く 首途ゆゝしも